いつの間にか溢れていた涙を慌てて拭う。 「ありがとうございます。この部屋、お借りします」 「ええ。自由に使ってね。夕食の時に呼びに来るわ」 「はい」 母はそう言って部屋を後にする。 一人残された部屋。 懐かしいその部屋。 そっと机の引き出しをあける。 「写真・・・」 友だちと撮った写真が出てきた。 しかし、そこに映っているのは友だちだけ。 梨乃の姿は元からそこになかったかのように消えている。 「私っていう存在自体は、綺麗に消えてるんだ・・・」