「では、プリンセス。ごゆっくりお休みください」
「ありがとう。おやすみなさい」
一日の任務を終え梨乃は与えられた部屋に戻る。
ベッドの脇の小さいランプの灯りだけをつけ、ベッドにもぐりこむと梨乃は持ってきていた本を取り出した。
それは、いつも勉強のために読んでいるこの世界の事が書かれた歴史書。
とても分厚い本で、これまでの歴史や国々の細かいことまで書かれている。
「一応一通り読んだけど、やっぱり覚えきれない。まったく土台のない中では、難しいな・・・」
梨乃がこの世界に来たのはほんの数か月前。
ようやくこの世界を受け入れ、歩み出したところだ。
「でも・・・、こうして自分の目で見ることができると覚えやすいかも」
経験からの方が、記憶には残りやすい。
プリンセスとしてやっていくために、少しでも知識を増やさないと。
梨乃はそう思い、本を開く。
ドーベル王国のページを開き読み始めると、クロウが言っていたお祭りの起源の話や、王国の立て直しの様子など細かく書かれていた。


