「お前は、どうしてそんなにまっすぐいられるんだ」
まるで独り言のように囁かれた言葉。
梨乃は身体を離そうとシドの胸に置いた手を止めた。
まるで、泣いているような声だった。
「お前を見てると・・・自分がどれほど汚く黒いのか・・・つくづく嫌になる」
「シド・・・?」
「俺の生きた道は、・・・間違いだったのだと、思い知らされる」
その言葉の意味は解らなかった。
それでも、シドが何かに苦しみ思い悩んでいるのかは読み取れた。
梨乃はそっとシドの背中に手を回す。
「シドたちのおかげだよ」
「・・・」
「私、最初逃げたんだよ。現実を受け入れられなくて。そこでシドに会ったの。だからね、私はそんなにまっすぐじゃない」
最初から、すべてを受け入れられたわけではない。


