「不安をあおるだけかと、お伝えすることを悩んでおりましたが・・・。知る権利はあると思いますので」

「う、うん」

「ターナー国王が狙っているのは、おそらくプリンセスです」




真っ直ぐ見つめられ息が詰まりそうになるほど緊迫した空気に、梨乃が唇を噛む。
そして告げられた言葉に、目を見開いた。

ビクッと震わせた身体。
息がつまり、周りから音が消えるような感覚。




「エドワード家、王族の血を絶やすこと。それがターナー国王の狙いの中にあると、我々は考えています」




負い目になっている事を解消する手立ては、それしかない。
国を奪う事よりも、おそらく最優先事項となっているだろう。

国よりも、一人の人間の命を奪う事の方がきっとたやすいことだ。




「ですが、我々が、必ずお守りいたします。プリンセスを死なせたりなどしません。信じてください」



クロウが梨乃の手に手を重ね、力強くそう告げた。
強張っていた体の力がフッと抜ける。



「我が命に代えてでも、お守りします」



しかし、その言葉を聞いた瞬間梨乃は重ねられた手を抜いた。
クロウが戸惑うように顔をあげると、酷く傷ついた表情の梨乃が見えた。