「我がエスターン王国は、代々王族が王位を継承していきます。それは500年の長きにわたり途絶えることのない血」

「500年・・・」



ピンとこないほどの長い間。
梨乃は息をのむ。
そうして繋がれた血が、今梨乃の中にも受け継がれているのだ。



「それが、正しいとも、だからこそいい国ができるとも思いません。国は、血で作るのではなく、その人の人柄や心で作るものだと思いますから」

「・・・うん」



王族の血を受け継いでいる人が作る国だからいい国になるのではない。
クロウが言いたいことは、梨乃にも伝わった。




「ですが、ターナー国王はそのことでエスターン王国に劣っているのではないかと、考えているようです。ですから、劣っていないということを誇示するため、我が国を襲いその手中に収めようとなさっているのではないかと。それが我々の見解です」

「・・・そんなに、大事なことなのかな。大きな国を創ることが。もっと、大事なことがあるんじゃないのかな」



ただ、自分の力を誇示するためだけ。
地位や権力を得るためだけの戦。
それに何の意味があるのだろう。




「プリンセス・・・。一つ、話しておきたいことがあります」




クロウが神妙な面持ちで梨乃を見つめた。