「お疲れで眠られていたので部屋に運ぶ途中だったんですよ」

「あ、ご、ごめんなさい。もう自分で歩けるからっ」



状況を理解した梨乃が身じろぐ。
シドが仕方なくそこに降ろすと梨乃は照れ臭そうに服を正した。




「ごめんね、重かったでしょ?」

「・・・いや」

「プリンセス、入浴の準備は整っておりますので、入浴を済ませ本日はもうお休みください」

「ありがとう。そうするね」

「我々はまだ少しすることが残っていますので」

「うん。わかった。じゃあ、おやすみなさい」




梨乃は二人に目を配ると、そう言って歩いて行く。
その背中を見つめシドはしばらく立ちすくんだ。
そんなシドを見て、クロウは思案するように息を吐く。



「とにかく、よく考えなさい」

「・・・わかってる」

「一つだけ。もし、戦う覚悟を決めたとしても・・・。あなたが持つのは、死ぬ覚悟ではなく、生きて守り抜く覚悟です」




クロウは踵を返しシドに背を向けたままそう告げた。