「クロウ・・・?どうしたの?」

「プリンセス。落ち着いて聞いてください」



梨乃のところに戻ってきたクロウは神妙な表情でまっすぐ梨乃を見つめた。
梨乃は息をのみ、小さく頷いた。



「エスターン王国と敵対しているヘルスター王国があることは、以前お話しましたよね」

「う、うん」

「そのヘルスター王国が、攻め込んできたそうなんです」

「・・・えっ?」




梨乃がドキッと声を上げた。
攻め込んできた。
梨乃にとっては現実味のない話に恐怖がこみ上げる。
思わず震える身体を、クロウが肩に手を置いた。




「大丈夫です。敵は決してこの城まで来させません。そのために騎士が応援に向かっていますから」

「戦いが、始まるの?」

「そう・・・ですね。今は、ヘルスター王国の土地からエスターンに渡る道があり、そのあたりで食い止めているところです。ですが、もしもの時のためこの後プリンセスは私と一緒に安全な場所に行ってもらいます」




真剣な表情でクロウが言った。