「ひゃーきれい! ベッド大きい!」


部屋に入るなり美しく整えられたベッドに勢い良く飛び込んだ私を、高宮くんは呆れ顔で見つめてきた。

「ガキか……」

「え〜だってホテル来たときのお決まりじゃん。ふかふかで気持ちいいよー」

寝そべったまま手招きすると、高宮くんははあ、と息をついてベッドの端に腰掛けた。……まあなんという、控え目な。
それすらも愛おしくて、笑みがこぼれる。


「今日は、ありがとうね」

「……別に」

「高宮くんから声かかるのずっと待ってたんだー。せっかくのクリスマスだし、……今日はもう半分諦めてたんだけど」

誘いが遅かったことをほんの気持ちだけ責めてみると、彼の顔がこちらを向いて、口が小さく「ごめん」と動いた。
本当は全然怒っていないけどね。


高宮くんの気持ちには前から気づいていて、それでも今まで私からは何も言わなかった。
いつの間にか彼からの誘いを待つのが楽しみになっていて、ずっとずっと待ってばかりいたから、それが癖になってしまっていたのだ。


こんなときくらい、私から言ったってバチは当たらないだろう。
私は起き上がり、彼の方に向き直る。


「誘ってもらえて嬉しかった。一緒に過ごせて嬉しかった。これからも、高宮くんとこんなふうに一緒にいられたらいいなって思うよ」

私たちの今までの関係に名前をつけるなら、どんな名がふさわしかったんだろう。

友達なんてとうの昔に越えていて。
だけどまだ恋人じゃなかった。

時間はかかったけれど、こんな日だからこそ、ちゃんと伝えたい。


「……これ、よかったら受け取ってもらえると嬉しい、です」


傍らのバッグからリボンの包みを取り出し、高宮くんに差し出す。
包みを解き中に入っていた小さな箱を開けた彼は、息を飲むようにその中身をじっと見つめる。