「お疲れ様~、今日も疲れたわぁ」
「飲みに行く?」
「飲む力もないわ、帰る~」


夜、閉店後作業も終わり、みんなバラバラに帰る。この時期は誰もが死んだように帰る。よく休んでな、と声掛けする俺の次に、マスター越えの栗山は、

「みんなが頑張ってくれたから今日も予算達成できたよ!お客様も喜んでたし、明日も頑張ろうね!」


死んだ顔から少しずつ生気が戻ってくる皆を見て、栗山は笑顔で手を振った。
お前は社長か。と心の中でツッコミを入れながら、周りを見渡す。
俺と栗山以外はみんな帰って、静まり返ったこの場。

栗山は髪を解き、捲くっていた裾も下ろし、ポケットに入れていたであろうマスクを取り出した。


「栗山、こっち向いてみ」


ゆっくり振り向く彼女の頬にはプツプツと赤い膨らみがあった。


「あーあ、本当に夜は弱いのなぁ」

「冬だけですもん」

「おいで」


両手を広げると、彼女は素直に俺の腕の中に収まった。
普段は鬼のような彼女が、冬の夜は素直で可愛くなるとは・・・


「寒冷アレルギーは魔法みたいだな」

「私は辛いです」

「俺が暖房になるだろ」

「マスター・・・ポケットにホッカイロ入れてますね」



end