向こうの方で沙羅と1人の男性が話をしているのを見て春樹は唇を尖らせた。




「誰、あれ。」




「あれ、覚えてない?

よく沙羅を追いかけて現場まで来てた2人組の記者さんよ。」




瑞希の声に春樹はため息をついた。



忘れるわけがなかった。



顔を見たのは久しぶりだが沙羅の笑顔を見れば誰だかすぐに分かる。




「……俺には、あんな風に笑わせられない。」




「そりゃあ、あの人達は沙羅が1番辛いときに側に居たんだから。」




瑞希の言葉が胸に痛かった。




「……まあ、そうですけど。」




「春樹。まだ遅くないのよ?」




瑞希が少し首を傾げて春樹を見た。




「まだあなた達は若いんだから。」




「何の話ですか?」




瑞希はくすくす笑うと肩をすくめた。




「分かってるくせに。」




「瑞希さん、俺達のマネージャーなのにそんなこと言っていいんですか?

もし恋愛なんてことに発展すれば、Starlightは無傷ではいられませんよ。」




「そんなこと分かってるわよ。

だけど好きな人がいながら何もしないなんて、そんな辛いことないでしょう。」




他の人にとられちゃうわよ、とだけ呟いて瑞希は監督の元に歩いて行った。



そんなこと春樹も十分分かっていた。




「……だけど、どうも出来ないだろ。」




それが正直な気持ちだった。



自分達がまだデビューしたての高校生の時なら、こんなこと考えなかったかもしれない。



だけど大人になった今、Starlightにとっても春樹にとっても、守りたいものが多すぎた。



自分の気持ちを優先させれば何かを失ってしまう気がした。




「……どれも失いたくないんだから。」