正樹の言葉も聞いていなかったらしく、仁はさっさとこのドラマの監督の元へ走って行ってしまった。



2人は昔からの知り合いのようで、向こうの方で楽しそうに話しをしている。




「沙羅ごめんね。なんか。」




「いえいえ。いつものことでしょ。」




沙羅が笑ってみせると正樹も笑顔になった。




「どう?仲直り出来た?」




正樹の言葉に沙羅は嬉しそうに頷いた。




「なんとか!元通りとは言えないけど、ちゃんと目を見て話せるよ。」




それを聞いて正樹は安心したように息をついた。




「ずっと気になってたんだよ。

撮影が始まってから忙しくなったのか君は全然顔を見せてくれないし。」




「撮影がなくても忙しいですよーだ。」




沙羅は少し舌を出した。




「そうだった。沙羅は人気歌手だったね。」




「それもなんか恥ずかしい。」




2人は笑った。



沙羅がこんなに楽しそうに笑っているのを見たのは本当に久しぶりだと正樹は思った。



沙羅とはもう長い付き合いになり、いろんな表情を見てきた。



しかしどんなときでも、沙羅はStarlightに縛られていた。



今も全く無関係とは言えないけど、それでもその中で精一杯笑えている。




「良かったね。」




「何が?」




「いや、なんでも。」




正樹の言葉に沙羅は不思議そうに首を傾げた。




「沙羅さん!撮影始めますよ!」




「はーい!」




沙羅はもう一度だけ正樹を見た。




「行っといで。沙羅、楽しんでね。何事もそれが一番だよ。」




「うん!」




沙羅は正樹に笑顔を見せると走り出した。