これは仁の癖だった。



自分の担当した記事や雑誌が他の人に見られるのが恥ずかしいのか、何かと理由を作ってその場を離れてしまうのだ。




「まったく、先輩も変わらないなぁ。」




「仁さんとはどれぐらい一緒にいるの?」




「ん~、20歳の時からだから4年ぐらいかな。先輩とは同じ大学だったんだよ。

その頃から一緒に仕事をしようって話してたんだ。」




「長いねぇ。」




沙羅はそう言ってから雑誌の表紙に目を移した。




『今週の特集は、このグループ!』




そんな文字が、雑誌のトップに大きく載っている。




「『3人は人気急上昇中のStarlightのメンバー。デビュー1年目にして多数ヒット曲を…』って、こんなこと書く必要あるの?」




沙羅は正樹の椅子に座りながらクルクル回った。



長い黒髪がふわふわと中に浮く。




「そこ僕の席なんだけどなぁ。」




正樹はそれを見てため息をついた。





「……そろそろ、事務所に戻ったら?先輩の言ってた通り沙羅の将来、それにStarlightのこれからにも関わることなんだから、今のうちに3人で自分達の意見を言い合った方がいいんじゃないか?」





紗羅は突然ピタッと止まった。



その瞳は正樹ではなく正反対の窓の方を向いている。




「…2人の顔を見るのが怖いの。」




紗羅はため息をついた。




「…1年経ってね、自分でも考えてみたの。デビューしてすぐからグループの関係はあんまり良くなかったでしょ?

でもあたしも、美那も、見て見ぬ振りしてきた。

晴樹は何回も仲直りしろって言ってくれたのに、お互いこのままやっていけるって思ってたんだと思う。」




沙羅は雑誌を正樹の机に置いた。