いつ生徒が出てくるかと背伸びまで始めた人達が一斉に正樹の方を見る。



正樹は正面に倒れており、1人の少女がその背中に乗り上げる形になっていた。



どうやら、少女が後ろから正樹にぶつかったらしい。




「わぁ!っと…ごめんなさい!!」




少女はすぐに背中から降りると正樹を引っ張って立たせた。




「大丈夫ですか?」




「ま、まぁなんとか…」




(何なんだ…?)




そう思いながら顔をあげた正樹は、一瞬で息を飲んだ。



正樹を後ろから押し倒したのは長めのまっすぐな髪にパッチリした目をもった女の子だった。



ネクタイは式典用のもので、エンブレムを見るとこの学園の生徒なことが分かる。




「うわぁ…」




「うわぁ?」




女の子は正樹が無意識に出していた声に首を傾げる。



「…本当に大丈夫ですか?」




「う、うん!!君、ここの生徒さんだよね?」




「はい。今日から!」




正樹の言葉に女の子が笑顔で頷いた。




(ん?今日からってことは、入学生?)




「…さっき放送で入学式は終わったって…」




「ですよね!私寝坊したんです!」




女の子は すいませんでした。失礼します。と付け加えて鞄を持つと、報道陣のど真ん中を突っ切って校門に走って向かって行った。




「…び、美人だったな…」




正樹はまたズレてしまったメガネを直すこともせずに頷いた。




「…先輩、あの子にしましょう…」