「うわぁ。本当に2人しかいないんだ。」
沙羅は気づけばそう呟いていた。
芸能部の入り口に扉はなく、廊下から中が丸見えだ。
広さも沙羅達の教室の半分ほどしかなく、たくさんの資料らしきものがぎっしり詰まった壁一面の本棚は天井まで届きそうなほど高い。
その他には本棚の隙間に半分だけ顔を出した窓、2つの大きなデスク、小さな冷蔵庫と首が回る扇風機しかなかった。
「あ!本当に来てくれた!」
正樹の表情が突然明るくなった。
正樹は入り口に立つ沙羅に走り寄ると手を掴んでブンブンと上下に振った。
「ごめんね、むさ苦しいところで。男2人だからなぜかこうなっちゃう。」
ニコッと笑った正樹の後ろで、仁は驚きのあまり口が閉じないようだった。
「な、なななななな…!」
「先輩、僕が時間があったら来てくれって言いました。別に良かったでしょ?」
「全然!OKだよ!ようこそ!!」
仁はぴょんっと立ち上がるとニコッと笑った。
「ビックリしたなぁ。正樹君がStarlightのSaraを捕まえてくるなんて!」
「先輩変な言い方しないで下さいよ。」
2人のやり取りに沙羅は思わず笑った。
「今日は、これから3人で練習があるのでちょっと遊びに来ただけなんです。」
「迷惑じゃありませんでしたか?」と付け加えた沙羅に、2人はブンブンと首を振った。
「見たら分かると思うけど、ここはそんな忙しいところじゃないから。
君達が何もしてない間は僕達のやることってほとんどないに等しいし。」

