「まーさーきー君!暑い!!」
「そんなこと知りませんよ。集中して下さい先輩。」
2人は記事の編集に夢中だった。
しかし今は7月で、2人しかいない弱小芸能部にはクーラーなんてものはない。
ただ1つの扇風機は首は動くがその範囲は狭く、仁が当たれば正樹まで届かず毎日喧嘩していた。
「君はどうしていつも長袖なんだ。半袖を着ているところを見たことがない。」
「そらそうでしょう。先輩の前で着たことないですもん。」
正樹は手の甲まで隠れるほどの長袖を着ていた。
その生地自体はとても薄いようだが、指がかろうじて出る程度で見ているだけでも暑い。
「半袖にしろよ~。見てるだけでもあつ…い……」
正樹は仁の言葉が途切れたのを不思議に思って振り向いた。
仁は扉のない入り口の方を見て固まっている。
その視線の先には不思議そうな表情で狭い部屋を見渡す沙羅の姿があった。
「うわぁ。本当に2人しかいないんだ。」

