紗羅は頷くと広いロビーを見た。
みんな厳しい顔をして通り過ぎていく。
仕事とはいえ、こんな所にあんなお気楽な2人が毎日通っているとは思えなかった。
「…いるかなぁ。
でもあたし達を追いかけてるんなら、今日は午前中で仕事終わりだから帰ってるかな。」
紗羅はため息をついた。
正樹に「時間があれば来てみて」と言われ、自分が本当に行くとは思っても見なかった。
でも瑞希が昼からは休めと言ったとき、なぜかまた正樹に会いたいと思っている自分がいた。
「あの…Saraさん?」
紗羅は呼ばれていることに気づき、慌てて振り向いた。
「はい!」
「これを、首におかけください。」
紗羅は首からかける入社許可証を受け取ると、礼を言って歩き始めた。
芸能部があるのは、本当に建物の奥の奥だった。
人に道を聞きながらエレベーターに乗り、広い廊下を抜け、角を2つも曲がったところでやっと『芸能部はこちら→』と書かれた看板を見つけた。
「…遠いなぁ。」
紗羅はため息をつくとその看板に従って廊下を歩き始めた。

