「これは記者として聞いてるんじゃない。
僕の個人的な興味だから、記事に載せたりはしないよ。安心してね。」
その言葉は、「上手くいってないんだろ。」と沙羅に言っているようだった。
沙羅はため息をついた。
「…ちょっと、ギシギシはしてるかなぁ。」
「ギシギシ?」
沙羅は頷いた。
「…本当に記事にしないって約束して下さいね。記事に出てたら訴えますから。」
沙羅がぎゅっと名刺を握りしめたのを見て正樹は笑った。
「大丈夫だよ。」
「……Minaと、あんまり上手くいってなくて。
デビューする前グループ名の発表の時に、同時に私がリーダーだって発表されたんです。
その時表情が変わったなって、なんとなく思ってたんだけどそれは間違いじゃなかったみたいで。
いつもは普通なのに失敗したりすると突然冷たくなったりするんです。」
「…Minaが失敗した時はどうするの?」
「どうもしませんよ。私は、MinaもHarukiも大切な仲間だと思ってるから。」
沙羅はため息をついて俯いた。
「……この頃スケジュールが詰まってるから、お互い体力がついていかなくてイライラしてるの。
慣れたらマシになると思うから、今我慢してたら大丈夫。」
正樹がため息をついた。
そのため息を聞いて沙羅は慌てて顔を上げた。
「ごめんなさい。全然取材になってない…!」
「いやいや。気にしないで。そうだなぁ…僕に何か出来たらいいんだけど。」
その時、チャイムが学校中に鳴り響いた。
「予鈴…そろそろ行かないと。」
2人は同時に立ち上がった。

