「覚えててくれたんだ。あのときにぶつかったから君達を追いかけようと思ったんだ。」
「あのときはごめんなさい。急いでて…」
紗羅が頭を下げると黒縁メガネの男性は慌てて首を振った。
「こっちこそ、周りに気をつかってなくて…怪我はなかった?」
黒縁メガネの男性は紗羅に笑ってみせた。
「ずっと君達を追いかけてるから、また会うと思うよ。」
「正樹君!君ばっかりずるいぞ!」
正樹の横で仁が暴れている間、晴樹はまだ理解出来ていない顔で紗羅を見た。
「…知り合い?」
「知り合い…かな?ちょっとした事故で…」
紗羅はうーんと唸る。
「この前のお詫びってことで…。ちょっとだけならいいですよ。」
「おい、紗羅!」
晴樹が止めようとすると、紗羅は晴樹に笑って見せた。
「大丈夫だよ。晴樹は先行ってて。」
晴樹はまだ納得がいかないようだったが、正樹と仁が嬉しそうに笑ったことでそれ以上深入り出来なかった。
「分かった。先行ってる。」
「うん。ありがと。」

