あの頃・・・・。
それは、俺が中学2年生の時のことだ。
あの時俺は、初めて告白して初めて付き合いはじめた。
あの頃はとても楽しかった。
付き合ってた子は、クラスで1番人気といえる頭が良くて可愛い子だった。対して俺は、頭がすごく悪かったしイケメンといえるような顔でもなかった。彼女を見た瞬間からこの子は可愛いと思っていた。いわゆる、一目惚れというやつだ。
俺は、クラスで1番人気といえるような彼女と付き合えたのは今でも嘘なんじゃないかと思ってしまう。告白しようと決めてから、「ふられたらどうしよう」とか、「もう話してもらえないんじゃないか」などいろいろな不安があって、告白するのに時間がかかった。中1の4月に思ってから、中2の7月くらいまで一年間以上ずっと告白することをためらっていたが、夏休みの前までには、告白しようと決め7月の後半にやっと告白した。その結果「OK」をもらうことができた。
その日は嬉しすぎて家に帰ってから、ずっとニヤニヤがとまらなかった記憶がある。でもそれを家族に知られたくなかったから、家族の前ではニヤニヤしないように気をつけていた。
なぜ親に知られたくなかったかというと、父が「お前は頭悪いんだから勉強だけに集中しろ!」とうるさかったからだ。そのせいで、中学生になってからゲームもあまりさせてもらえなかった。

だから、俺は「絶対頭よくなってやる。」とずっと思ってた。
だけど俺は勉強が嫌いだし、集中力がなかったので、付き合いはじめる前までは頭良くなることなんて夢のまた夢だと思っていた。だけど付き合いはじめてから、彼女が頭良かったということもあり、分かりやすく苦手な所を教えてもらった。苦手な所といってもほとんどが苦手だった。だけど彼女は、テストの前の貴重な時間にまで
「教えると私の勉強にもなるから。」
といって教えてくれるようなとてもやさしい彼女だった。そのおかげで俺は中学校に入ってから初めてテストで80点代の点数をとることができた。親に見せるととてもびっくりされた。


彼女とは学校では、普通に「おはよう」とあいさつか、なにげない話ぐらいしかしない友達のような存在だった。
だけど休みの日は、デパートへ行き手をつないで歩いたりおそろいのものをかったり、カラオケをしにいったり、彼女の家で中学生になってからあまりやることのできなかったゲームをしたり、と楽しく過ごすことができた。

彼女と出会えて、いや、付き合いはじめることができたおかげで俺は変わることができた。彼女に感謝してる。

付き合いはじめてからの中学生活は、頭が前よりよくなり勉強が楽しくなったり、彼女と一緒にいれたり、いろいろなことがとても楽しく時間がたつのがはやかった。

そして、3年生になり卒業が近づいてきた頃もちろん高校の進路を決めなければならない。
俺は、勉強を頑張れば彼女と同じ高校へ行くことができると思ってた。
だけど、彼女は突然
「親の都合にでね、遠くに行くことになっちゃったの。」
と言った。びっくりした。
一瞬頭の中に入ってこなかった。
悲しいけど、涙はでなかった。

その時、人生はそんなに甘くないとその時はじめて思った。

今の彼女に告白してOKを貰えたことは奇跡だったのだろう。こんな頭が悪くてイケメンなわけではない俺と、よくあんなに頭がよくて可愛い彼女と付き合いはじめることなんて今でも長い長い夢なんじゃないかと思ってる。 
こんな感じで今まで、なにげにいろいろなことが楽に生きてきた。

彼女と離れ離れになるのは嫌だった。
もっと、一緒に遊びたい。
もっと、一緒に話したい。
もっと、もっと一緒にいたかった。
一緒にいるだけでよかった。
一緒の空間にいるだけで幸せだった。
一緒にいるだけで楽しかったから離れたくなかった。
つらかった。

そして、そのことを知ってから数日後卒業式が行われた。
卒業式が終わったら、みんなと会える回数が減ってしまう。
それよりも、彼女と離れ離れになることの方がつらかった。
卒業式の途中、そんなことを考えてたら何回か泣きそうになった。

卒業式が終わった。

中学生時代が終わってしまった。

そして、高校受験が近づいてきた。

俺は彼女と同じ高校へ行けないと思ったら、勉強をする気がなくなった。

だけど、彼女はいつもと同じように勉強を教えてくれた。
この日々がずっと続いて欲しかった。

高校受験の日、とても緊張した。今まで彼女が教えてきてくれたことをちゃんとだしたかったからだ。

高校受験は無事うかることができた。
もちろん彼女も受験にうかったらしい。


数日後、最後になるかもしれないデートをした。
デートは、いつもと同じようになにげない話や、おそろいのものを買ったり、いつもと同じような感じのまま終わってしまった。
彼女ともうすぐで離れ離れになってしまうということを忘れるくらいいつもと変わらなかったし、楽しかった。
家に帰ってから俺は、とても後悔した。
あのデートが最後になるかもしれないと分かっていた。
なのになんでいつもと同じことしかできなかったのか。



彼女が親の都合で家を離れる日の前日の夜、

「ふられたらどうしよう」とか、「もう話してもらえないんじゃないか」とかいう理由であの頃は、彼女に告白するのを1年以上もためらってしまったのか、ということを後悔していた。ためらわないで告白していたら、今より彼女と1年以上一緒にいれていたということになる。
こんなことになるなら告白するのをためらわなければよかった。
もっと一緒にいたかったから・・・。
そんなことを考えてたら、その日は全然眠れなかった。

彼女が遠くに出発する日、案の定俺は昨日眠れなかったせいで寝坊してしまった。走れば間に合うと信じて、ただひたすら走った。
俺は、昔からバカだったけど足だけは速かった。それだけが自慢だった。
でもそんな俺も、彼女に出会ってから変われた。彼女に出会ってから頭が少しよくなれた。そんな彼女に「ありがとう。」と言う言葉とまだ言えてないあの言葉を・・・。
言いたいことがあった。だから全力で走った。
久しぶりにこんなに全力で走った。
全力で走ったおかげで、間に合った。

「ハァハァ・・・。遅れてごめん。昨日全然眠れなくて寝坊しっちゃた。」
彼女は分かってたよというように、
「なんとなく分かってた。だから謝らないで欲しいな。」
彼女は泣きそうになりながらそう言った。
俺も泣きそうだった。
「分かってたってなんだよ。俺そんなに今まで寝坊してたか。」
「そうじゃないけど。」
彼女は出発する前なのに、いつもと変わらない会話をした。
「でも、本当にありがとう。お前のおかげで、勉強楽しいって思えるようになったし、毎日が楽しくなったよ。大好きだよ。」
大好きだよという5文字がやっと言えた。そうずっと言いたかった言葉はこれだったのだ。最後にしてやっと言えた。
「ありがとう。私も大好きだよ。でもね、高校は違うところに行かなきゃいけないの。大好きだからってそれは、かわりもしない事実なの。だから、本当はずっと一緒にいたいけど、別れよう。また、2人が出会えた時にどっちともが恋人がいなかったらさぁ、付きあおうよ。また出会えるかも分からないけどね。高校でまた違う出会いがあるかも知れないし。今は別れることが1番いいと思うんだ。またいつか会おうね。」
そう言って彼女は泣いていた。
俺は、別れようと言う言葉を聞いた瞬間に頭が真っ白になりなにも言えなかった。なにか言わなきゃ、そう思った時彼女が、
「私、そろそろ行かなきゃ。」
と言って彼女は泣きながら言った。
俺は、またいつか会ってまた付き合えると信じて彼女とさよならをした。
「ばいば~い」
と・・・・・・・・。