「…はぁぁぁぁぁぁ。」

一気に緊張がほぐれて、私はその場にしゃがみこんでしまった。

「嫉妬してたのがバカみたい…。」

「オレはあんたの嫉妬する顔が見れて嬉しかったけど?」

ふふっと妖しげに麗は微笑む。

「薫のやつ、ずっと妹欲しいって言ってたから多分和香のこと気に入ったんじゃない?」

「それは嬉しいけど…。」

「けど?」

「薫さんって歌川先輩と付き合ってたんだね。」

「…それも嫉妬?」

「いや…別に!そーゆーわけじゃないけど。」

いつも無表情だから、感情が読み取りにくいけど最近何を思ってるか分かるようになってきた。

「(やばい…これは怒ってる)」

「…。」

しばらく沈黙が続く。

「…あ、あのう。」

「…はぁ。」

え、幻滅された?どーしよ…。

「ほんとかっこわる。」

「へ?」

「オレあんたのことになると余裕なくす。」

「…それは私もですよ?私なんて毎日考えてるもん、麗のこと。」

途端に麗の綺麗な瞳が見開かれる。
前髪がすきま風でサラサラ揺れている。

『綺麗』

という言葉がぴったりだ。
その瞳に吸い込まれそうになってしまう。

「…和香。」

「……ん?」

ギュッと抱き寄せられる。

「ごめん。ずっと忘れない。」

その時の言葉の意味を私は理解していなかった。麗…どこにいるの?