約束の13時。

「お~いっ!ぐら!智美ちゃんこっちこっち!」

そこには女の子に囲まれている歌川先輩と目黒先輩がいた。

『えーもう行っちゃうのぉ?つまんなぁい。』

「うるせー。誰だよあんたら。」

「日向…。ごめんねまた今度。」

近づいてくる彼らを見ると、私服もほんとにオシャレで下手したらモデルより決まっているかもしれない。

「…ふ~ん。」

歌川先輩は私の服を見ると

「めちゃくちゃ可愛い…っ!!さすが、ぐら!」

ギュッ

「ちょ…!?」

「…今日だけでいいから、ぐらの彼氏でいさせて。」

抱きしめたまま言うから、表情は分からなかったけど切なそうに言った。

「…先輩?」

「さっ!早く行こーぜ!もう和成と智美ちゃん行っちゃったし。」

前を見ると

「今日も可愛いね。」

「そーゆーお世辞いりませんから。そんなんで喜ぶとか思わないで下さい。」

珍しくシュンっとしている目黒先輩と、何だかんだ楽しそうな智美がいた。

「あー見えて和成緊張してんだ。」

「えぇ!?そーなんですか。」

お似合いだと思うんだけどな。

「ほーら!行くよぐら。」

んっ。と手を差し出してくる。

「…えっと…?」

「ったく。」

と言って私の手を強引に握る。



「かぐちゃーん!あれのろ!」

「え、あれ…?」

私がもっとも苦手なバイキング…。
私の表情を見てか目黒先輩は

「じゃあ、オレと乗ろうよ。」

「え、かぐちゃんと「だーめ。」

強引に智美を連れて行ってしまう。

「じゃあオレらは観覧車乗ろ。」

「観覧車ならいいですよ。」

高所恐怖症だけど、下を見なければ怖くないし

『行ってらっしゃーい!』

「こっちに来いって。」

「嫌です。狭くなるじゃないですか。」

歌川先輩の目の前に座る。

「あのさ…オレのことどう思ってる?」

「え?あ、まぁいい人ですかね。」

「ふーん…。じゃあ麗のことは?」

「な!なんでそこで麗さんが…。」

いつになく真っ直ぐで真剣に聞いてくるから思わず目をそらしてしまう。

「ぐらが麗に会わないようにしてんの知ってんだ。オレにとってチャンスだと思った。」

「チャンス…?」

「ほんとにぐらのことが好きだから。」

いつものふざけた調子は全然ない。

「麗自信気づいてないけど、あいつ相当前からぐらのこと好きなんだと思う。オレは親友の彼女なんて取ること出来ねぇししたくもないから、これは最初で最後のチャンスだと思ってる。」

「私は麗さんのことなんて…。」

「そーやって、自分の気持ちに嘘ついてない?今日だってずっと上の空だった。」

「嘘なんか…っ!!」

と言った瞬間歌川先輩の顔が近づいてくる。

「…イヤっっっ!!!!」

ドンッと押しのけても微動だにしない。

「(…キスされる!?)」

「…っぷ。あはははははっ!!」

「えっ!?」

「ぐら、顔真っ赤。タコみたいー。あはははははっ!」

おかしいっと言って腹を抱えて笑っている。

「嫌がってる女の子に無理やりキスなんてしませんー。そこまで女に困ってないしね。あはっ。」

「騙したんですか…!?」

「ぐらのこと好きなのはほんと。でもぐらの気持ち考えたら奪うなんてことできねぇよ。」

あ、でもぐらのことはぜってぇ諦めねぇからな。と観覧車から降りる前に歌川先輩は言った。

『おかえりなさーい。』

観覧車を降りると

「神楽っっっっっっ!!」

「え、なんで…。」