「そ、そろそろ戻らないと。」

神楽は、はっとしたように言う。

「風邪ひいてるんだから、帰りな。」

「で、でも!!」

「オレのほうから先生に言っておいたから、へーき。」

そう言って頭をポンポンすると、俯いて赤くなる。

「…この前もオレのせいでビショビショになって、おまけに泣かせちゃったからその償い。」

「そんな…全然大丈夫です!」

こいつ、前から思ってたけど相当な強がり…。

「…大丈夫じゃないでしょ。タクシー呼んでおくから。もう少し休んでおきな?」

少しやることがあると言って、温室を後にした。

「…もしもし。親父?」

母親が家から出てってから、親父はありえないほど丸くなった。
多分最初で最後の頼みごとをする。