『麗のお気に入りの場所、その2。新館にある温室。行ってこい。』

そう言って歌川さんは私の背中を押してくれた。悪い人ではないのかな…。

「もうすぐ昼休み終わっちゃう…。」

私は走って、温室に向かうと鮮やかに咲いた花花が目に飛び込んできた。

「…ッ。香野……。香野麗!!!!」

「…うるさいな。ほんと飽きないねあんたも。」

その言葉がチクッと心にささる。

「…なんで、オレが1人になりたい時に現れるの。」

「さっきは、ほんとにすいませ「いいよ。…謝らないで。」

そう言うと香野麗は初めて私と目を合わした。薄茶色の瞳に引き込まれそうになる。

「オレも…悪かった。あんたにあたって。」

「い…え。あ、あの、歌川さんに聞きました。お母さんのこと。」

「あいつ……。それで、同情でもした?」

「そ…んな!!」

「別に気にしないで。」

「……。」

「なんでそんな泣きそうなの。」

「だって……。」

「…はぁ。」

ため息…。呆れられたかな。

「…オレ。女に泣かれるの弱いんだよね。」

「……。」

「嫌いって言ったこと後悔してる。」

「…え。」

「あんた、気に入ってんだオレ。だからまた屋上来てよ。」

そう言って微笑んだ顔は、どこか寂しそうだった。