「日向。そろそろ昼休み終わるから、麗呼んできて。」

「なんで、オレ…。」

そう文句を言いながらも、実はめちゃくちゃ恐い和成に逆らえず、いつもの場所に向かった。

「雨降ってんのに麗いんのかよ…ったく。」

ガチャ

「あれ…?」

そこにいたのは、麗じゃなく昨日の平凡女だった。

「平凡女?なんでお前いんの…。あ、麗知らな……。」

近寄って見ると平凡女は泣いていた。

「な、…なんで泣いてんだよ?!まって、オレなんかしたか!?ごめ「違う!!!!!!」

「え…?」

「違うんです。…なんでもないです。」

オレの横を悲しそうな顔で通ろうとするから、つい手を掴んでしまった。

「は…離して下さい!!」

「無理。なんで泣いてんだよ。」

「ビショビショになっちゃいますよ!!!!?」

「別に構わないけど。麗になんか言われたのか?」

「…き…嫌いだ…って。」

「麗のやつ。どうしたんだ?ま、移動すんか…。ほら、おいで。」

オレがいつもサボってる時に使う、準備室に行く。

「ここなら、誰も来ないから。」

「でも……。」

「オレがお前に変な事するわけないだろ?冗談もよし子さんだよ。」

「…よし子さんって(笑)」

なにこいつ。笑うとめちゃめちゃ可愛いじゃん…。

「麗ってさ、女嫌いなんだよ。なんでかって言うと…」

オレは麗のお母さんのことについて話した。麗のお母さんは麗が小5の時に出て行った。

「今まで明るかった麗が、その日を境に心を閉ざしちまったんだ。オレらともしばらく口を聞いてくれなかった。」

麗のお父さんはこの学校の理事長でとても厳しい人。そんなお父さんにお母さんはついていけなくて、男を作って出ていってしまった。

「麗は、厳しい教育を受けててそんな中でもお母さんと過ごす時が何より好きだったんだと思う。でも、男を作って麗を置いていってしまった。そんなお母さんを麗はどう思ったか。想像つくよな。」

「それで、香野さんは女嫌いなんですか。」

「お前、麗に顔が好きだとか言ったろ。」

「女はオレのどこを見て騒ぐか聞かれたから…。」

「あいつの顔は、お母さんそっくりなんだ。だから、死ぬほど嫌いだし顔が好きな女も信用できない。」

「…私、ひどいこと言っちゃった…。」

そう言ってまた泣きそうになる平凡女。

「まぁ、麗は多分お前のこと気に入ってたと思うし会いに行ってくれば?」

「…はい。」

オレは彼女の背中をぽんっと押して

「頑張れよ、平凡女」

と言うと、平凡女は

「平凡女じゃなくて、神楽和香です!」

って弾けた笑顔で言うもんだから不覚にもドキッとしてしまった。

「ありがとうございます。歌川さん。いい人ですね。」

「…ふん。オレを誰だと思ってんだ。」

「そうですね(笑)行ってきます!」

ガラッ

「……やべぇ。」

泣いたり、笑ったりコロコロ表情を変える平凡女に心を奪われた気がした。