結局昨日は香野麗のことばっか考えて、ろくに眠れなかった。

「かぐちゃん。もうお昼の時間だよー?いつまで寝てんの。」

「…智美。おはよー。」

「おはよー。じゃないよ!!今日は屋上行かないの?香野さんに会えるかもよ?」

「んー…。行ってこよーかな。」

「やっとかぐちゃんも興味示したか。」

「べ……別に!!?そーゆー訳じゃないけど。」

「はいはい。行ってらっしゃい。」

智美は小学生の頃からの親友だけど、私が人に興味を示さないのを心配していた。

「…香野麗、いるかな……?」

ガチャ

目の前に広がるのは、今にも降り出しそうな灰色の雲。そして、そこには

「香野…麗さん………。」

そんな灰色の雲の下でも輝く栗色の綺麗な髪。

「……また、あんた。」

振り向くと迷惑そうに顔をしかめる。

「………はぁ。なに、オレに会いにでも来たの?」

「そんな…わけないじゃないですか。」

「…神楽……和香だっけ?」

「……はい。」

「女は、嫌い………。って言ったよね。」

「……はい。」

「オレのどこを見て、騒ぐんだろ。」

「……か、顔じゃないっすか?」

「ふーん…あんたもそう思う?」

「…まぁ、…はい。」

だって、ほんとにかっこいいんだもん。

「………女ってみんな同じなんだね。」

「え……?」

「やっぱオレ。女もあんたも嫌いだわ。」

そう呟くと、香野麗は屋上を出て行った。その瞬間に降り出す雨。

「な…んで…。」

嫌いと言われたことがショックで、私は立ち尽くしていた。

ガチャ
「あれ…?」