「絶対がないだって?医者がそれを言うのかよ!!」

「喜一お兄ちゃん……」


悲しげに俯く喜一お兄ちゃんに、それまで黙っていた豊さんが、口を開いた。


「お医者さんだから、なおさら命の尊さを、知ってるんじゃないのかな」


「父さん……」


豊さんは、喜一お兄ちゃんの肩に手を置いた。



「俺も、夢月には後悔しない生き方をしてほしいと思ってるよ」


「豊…さん…」



そうだ、博美さんも豊さんの言う通りだ。後悔しないように、出来ることはしておきたい。



「……悪かった、取り乱して」


そう言って、喜一郎お兄ちゃんは、あたしに便箋と封筒を手渡す。


それを手に、あたしは笑顔を向けた。



「喜一お兄ちゃん、いつもあたしを心配してくれて、ありがとう…」


「夢月…」


「心配ばっかりかけてるのに、いつでも優しくしてくれる。そんな喜一お兄ちゃんの妹で、良かった…」


その言葉に、喜一お兄ちゃんは泣いた。


「俺も、夢月が妹で、良かったよ……。っ、なんか飲み物買ってくる」


そう言って、喜一お兄ちゃんは病室を飛び出した。


「喜一は、泣き虫だからな。俺も、売店で何か買ってくるよ。ゆっくり、向き合ったらいい」


豊さんは、あたしに気を使ってくれたのだと思った。それに甘えて、あたしは頷く。

 

「豊さん、ありがとう」


そう言って笑顔を向けると、豊さんは嬉しそうに笑う。


「夢月ちゃんは、やっと心から笑えるようになったんだね」

「え……?」


その言葉に、あたしは驚きで、目を見開く。