「俺にしか変えられないってなんだよ」

「…………あなたにそれを教える事は出来ない」

「……………なんだと?」

「言葉通りよ。あたしは医者なの、患者の情報を他人に口外する事はできない」


頑なに口を閉じる博美さんに蓮さんが苛立っているのが分かった。


―グッ。


博美さんの腕を掴む蓮さんの手に力が入る。


「…っ…乱暴ね…。でも、あたしが教えられる事は何も無いわよ」

「…………っ…クソッ!!」


荒々しく手を離すと、博美は乱れた服を整えた。


「………大事なのね…夢月ちゃんの事」


「…………何が言いたい…」

「…一つだけ忠告してあげる。これは、医者としてじゃない…あなたの姉のような存在として言うわ」


博美はいつものような余裕の笑みを消した。


「夢月ちゃんの傍にいたいなら…覚悟を決めなさい。生半可な気持ちで…あの子に近づけば、近いうちにお互いに後悔する事になるわ」


博美さんの言葉に、蓮さんは固まった。


「……どういう意味だ」


「あたしが言えるのはそこまでよ。あとはあなた次第だわ、蓮。答えが出たら、また助言くらいしてあげる」


「俺の覚悟って…何だよ…」


蓮さんの掠れた、弱々しい声に胸が痛む。


「蓮さん、博美さん……」


あたしはゆっくりと体を起こして、声をかけた。


「目が覚めたのね!」

「…あ…博美さ……」


抱き締めてくれる博美さんに、あたしは胸がいっぱいになる。