卒業も押し迫った土曜日。

大宮は朝から家に来ると、

お手伝いさんがお茶を出す間も与えず、

「出かける。着替えろ」

と命令口調で言ってきた。


ジョゼがいそいそと服を選んできて、

ママが着替えさせてくれた。



なんなの…?



「電車で行くの?」

「電車」


大宮の歩幅で、車椅子に合わせるのは大変だろうな。


どこに行くのか聞かなかった。

どうせ行きたくないって言ったって、

大宮のことだから、担いででも連れていかれるに決まってる。


駅員さんにも手伝ってもらって、電車に乗り込んだ。



こんな目線になるんだ…。

乗り込んで来る人の思わぬものが危ない。


紙袋の尖ったカド。

スマホしながらの移動。



一生、これと付き合うのか…



大宮は、足しか見えない。

この人は、いつまで私に付き合うつもりかな…


そう思っていたら、いつの間にか眠っていた。