いい流れが来た。


リードしながら、最後から二つ目の種目まで来た。


騎馬戦だ。

最初に女子の部。

次に男子の部。


そして最後は、主将・副将戦。


中央に主将。脇に副将。

その両脇に、もう二つの騎馬隊がある。



「大宮の騎馬できるヤツが、よく居たよね」

「全員、バスケ部じゃないですか」

「そっか」


そんな話をしながら、騎馬になってくれる男子生徒の上にまたがる。

こればっかりは、ウェイトを揃えるってわけにはいかない。

それでも大宮の隣にいる騎馬は、二番目に大柄に見えたので、うちの一番大きな騎馬を入れ換えた。


「あれ、ラグビー部なんじゃないの?」

「見るからに、そうですね…」



一つ目の鐘の音が鳴った。



「いくぞ!混合!」

「おおおおおおおおっ!!」


向こうからも気合いを入れる声が聞こえる。



合図の鐘が、けたたましく鳴り響いた。


怒号を上げながら、全員一斉に前へ飛び出す。


私の隊が一直線に、大宮隊へ向かっている。


ところが、国際のラグビー隊が斜め横断して、

別の隊に突っ走って行くのが見えた。



「ダメ!危ない!!降ろして!」


向かっている先は、四騎の中で一番体重が軽い。

女子隊だった。




戸惑ったように、主将同士の騎馬が止まった。

私はかまわず、騎馬を飛び降りた。

走って、ラグビー隊に追いつく。


女子の騎馬が、跳ね飛ばされた。

倒れ込んだ上に、勢いが止まらない騎馬隊が突っ込み、踏みつけた。

自分の口から絶叫が漏れた。


「ああああああああっっ!!」


右足がはっきりと音を立てて折れた。

続いて、左足の付け根に男子が落っこちてきた。


もう声も出ない。

息も出来ない。

頭の奥がツーンとしびれて、耳が遠くなった。



「何て言うんだっけ!?この子!?」

「光野さん!光野由梨絵さん!」

「光野さん!聞こえる!?光野さん!?」


息が…すえない…


「救急車、呼んで!」

「い、いやっ…!由梨絵…由梨絵…うそ……!」



ママだ…パニクってる…

ジョゼが私の頭をなでた。


「ユリエ、ダイジョウブ。心配しないで」


泣き崩れるママをジョゼが支えている。


そうだった。

ママは…私の母親デシタ…


祐介やノドカの声が聞こえる。


走った後の犬みたいな呼吸しかできない。

近くで大宮が、男子の胸ぐらを掴んで投げ飛ばしている。




誰か…

止めて。


大宮を


と…めて…