「会長でもないのに、なんでアイツが主将なんだよ」


大宮のことだ。

祐介と顔を見合わせた。


もう一人の声がした。

「俺は、あのオンナの方が分かんない。自分のオンナだからって、副将にするかフツー?」


大宮って、生徒会長じゃなかったんだ。



不満げに続いていた声が、ぱったりと止んだ。

柱の影から、大宮の巨体が現れる。



私たちは、何事もなかったかのように会議室へ入った。



本校は混合チームじゃないのに。

主将を決めるときは、どこも揉めるんだな。




もう部屋には、石丸さんが座っていた。


気のせいか、勝ち誇ったような顔で私を見ている。

なんなの?

遅刻しなかったってだけで、そんなに誇らしい?


そうじゃなかった。



みんなが席に着くと、石丸さんがおもむろに話し出した。

「光野さん、中学時代に親友のカレシを奪ったんだって?」



一気に血の気が引いた。



「学校中巻き込んで、大騒ぎしたんでしょ?そのお友だち、精神的に病んで、学校に来れなくなったって聞いたよ」




言葉が出てこない。

ただ、石丸さんの顔を見つめた。



祐介が抗議した。

「根拠のない誹謗中傷は止めてください」

「根拠あるけど?テニス部の子が、ショウケンのミツノって言ったら有名だったって」



ショウケン……正賢学園。

久しぶりに聞いたその名前が、アタマを殴った。


「暴行未遂なんて…エラそうなこと言って、自分はどうなの?」

「そんな中学時代のことを…!」

「いい、祐介。止めて。その人の言ってるとおりだから」


手を強く握った。

あの件に関しては、なにも言い訳しないって決めてる。



石丸さんが畳み込んだ。

「演舞は無しにして」

「はい!?」

「クダラナイ。コスプレして、踊って見せるなんて」

「今さらなんですか!?もう決まったことでしょう?」

「あんなの時間のムダ」


困ったな…

反論を考えていると、大宮が口を開いた。


「演舞はやる」


石丸さんが眉を寄せた。


「なんで?…だって、あんなに時間がないって…」

「一度、決定したことを覆す気はない」

「で、でも、あっちゃん……」

「その呼び方は止めろって言ってるだろ!」