少女は紫陽花色の雫を拾う

腸が煮えくり返らせるような内容の手紙なのだが、何故だか、未だに手元に残してあった。

十年も俺の手を煩わせるほどの女だったか?

俺は、高一の初夏、アイツが傍に居た頃の記憶を、慎重に手繰り寄せる。

ぼやけた記憶にあるのは、覚えのない罪状で、何度も生徒指導室に強制連行されたという理不尽な苦労くらいで。

九割八分、〝夏川杏子〟が俺に擦りつけたのだろう。

本当に、性悪女だった。

俺は、手紙から、テーブルの唐揚げA定食に目を移した。

食事中だったな。

俺は、病院内食堂〝馬右衛門〟で、遅めの昼食をとっていたのだ。

馬鹿馬鹿しい。

〝未だに忘れられない〟なんて、あの性悪女に、気があるみたいじゃないか。

飯が不味くなる。

俺は〝コシヒカリ30%、その他諸々〟が売りの、白米を掻き込んだ。