少女は紫陽花色の雫を拾う

「遠廻しにムショ行けってか?」

御手洗篤郎の乾いた言葉に、私は、コクリと頷く。

彼は、彼自身に言い聞かせているかのように、低く響かせた。

「大丈夫。ちゃんと、行くよ、行くから。冬山花鈴の殺しの罪は、償うから。」

「じゃ、これ、餞別。」

私は、足元の若草色の風呂敷包から、古めかしさが染み付いたような本を一冊、御手洗篤郎に手渡す。

7000ページ近くにも及ぶ、超大作本だ。

「おい、六法全書って嫌味か。」

御手洗篤郎の言葉が言い終わらないうちに、脳天に、ガスッと重い一撃を喰らう。

鈍い痛みに、物理的な法の重みを感じさせられた。

私は、脳天を抑え、ギャンギャン喚く。

「ったく、痛っいわね〜!もう、法を犯したりしないでよね。」

「誰の?この、六法全書。」

「何で?」

「少なくとも、お前のバイブルでは無いなと、思って。で、誰の?」

その時、私は、御手洗篤郎の瞳に、炎よりも強く熱い何か、を見た。

その瞳に、意を決した、私は、恐る恐る口を開く。

「……冬山花鈴のだって言ったら、怒る?」

一瞬、御手洗篤郎の瞳が、大きく、見開かれた。

だが、それは、すぐに、冷酷なものへと落ち着いた。

「知ってたかも。」