彼は、何か重要なことを思い出したかのように、ポンッと手を打った。

「あぁ、そうだ。で、俺はその弟の冬山颯太(とうやまそうた)。それから、もう一つ。お前の超能力について説明を頼む。」

「夏川 杏子よ。超能力については、期待しないでよ。ただ、ほんのちょっぴり、人の心を読むことができるだけなの。」

日本人の美しき心〝謙虚な姿勢〟を見せる私を冬山は、挑発する。

「へぇ、やってみせてよ。」

私は、頭上方向に向けた人差し指を自分の両耳にそっと添えて、小さな声で呟く。

「ビビビビビ…」

「胡散臭っ!何そのポーズと効果音。宇宙と交信でもしてんの?」

冬山は、呆れたとでもいいたげな瞳を私に向ける。

私は、冬山に冷たい微笑を浮かべた。

「一年C組の黒髪美少女の神崎小夜(かんざきさよ)。あなたが好意を寄せる相手よね?」

途端に冬山が、顔を紅潮させた。

「な、なんだよ、急に。神崎のことなんてなんとも思ってないつぅの!」

冬山は、完全否定したが、この日以来、私の超能力について信用するようになったことは確かである。