少女は紫陽花色の雫を拾う

一瞬で、俺の視界を〝赤〟が支配した。

俺は、炎で覆われた、何処か、ホテルの一室に居るようだった。

炎に、直接、晒された身体が、痛い。

肺に入り込んだ煙が、呼吸を乱し始めた。

「あぁ、この感じ、知ってるかも……」

自分の口から出た声に、不思議な違和感を覚えた。

男子高校生にしては、高すぎる異様な声……

その時、炎が、一層大きく燃え上がった。

その中に見たものは、幼い日の自身の姿だった。

炎が、ベットシーツ、カーテンを伝い、白い壁紙を食っていく。

俺は、足元で炎に呑まれていくロンドンタイムズに、目を落とした。

この世界の〝今日〟は、1998年5月17日らしい。

十三年前といったら……

〝1998・5・17 ウェルホテル火災〟

脳内にちらつく文字列を、無理やり追い出す。

「思い出したくない、思い出してはいけないモノなんだ。」