少女は紫陽花色の雫を拾う

「姉が自殺した。警察が一度調査したが、自殺の動機の点が、納得できない。調査を依頼したい。」

彼は、随分と簡潔にまとめたようだ。

国語の成績は、まずまずってところね。

私は、ゆっくりと目を開いた。

そして、暴言最低野郎の顔立ちが、そこそこに整っていたことに驚いた。

初っ端の暴言のせいで、顔の潰れたへそ曲がり野郎だとばかり、思っていたのだ。

私は、少し思案する素振りを見せてから、彼の顔に、伸ばした指を三本かざした。

「…諭吉三枚で引き受けるわ。」

「…は?お前、タダって言わなかったか?」

私は、身体を起こし、慌てた様子の彼にニヤリと笑いかける。

「〝ご相談〟はね。成功報酬は、諭吉三枚よ。」

彼は、意外にも素直に頷いた。

「了解した。姉の自殺の件は、引き受けるんだな。」

〝自殺〟というキーワードにふと私の脳裡に掠めるものがあった。

一ヶ月前の先輩の自殺の事件……

「えぇ、引き受けるわ。ねぇ…あなたのお姉さんって二年の冬山花鈴(とうやまかりん)さん?」