少女は紫陽花色の雫を拾う

私は、冬山に言う。

「少し、焦がしちゃったことは、謝るわよ。でもね、食べ物を捨てるなんて、許さない。」

「少し?この卵焼きは〝少し焦がしちゃった♡〟ってレベルじゃねぇだろうが!」

怒り狂った冬山が、目を剥く。

冬山の言う通り、卵焼きは、墨の塊としか言いようのない出来映えだった。

水に溶かせば、書き初めが出来そうだ。

「確かにそれは、私のミスだわ。打開策、ちゃんと用意してきたわよ!」

私は、冬山に、食用着色料、俗に云う食紅を振りかざす。

「まさか、それで、この丸焦げ弁当を着色するつもりか?」

「店にあった色は、全て買ってきたわ。安心してよ。私、美術の成績は、かなり良いのよ。」

私は、通学鞄から、百円ショップで購入した絵筆を二本、取り出した。