少女は紫陽花色の雫を拾う

私は、迫り来る枝に全神経を集中させ、手のひら全体でしっかりと掴んだ。

手のひらに凹凸のある粗めの感触が伝わってきた。

隣を見ると冬山も枝を両手で固く握り締めている。

そして、訪れる静寂。

そして、意外と木の枝って強いのね、と安堵に息を吐いた瞬間…

メリ…メリメリ…ボキィィイイ

「まさかの折れたぁ!」

私の悲鳴に冬山が叫ぶ。

「周知の事実だっただろうが!」

結局、私と冬山は、墜落したのだった。

しかし、私達は、まだ神に見放されていなかったのだ。

「え?私、生きてんじゃん!屋上から落ちて無傷とか信じられないわ。」

私は、制服のほこりを払いながら、立ち上がる。

冬山は、腰をさすっていたが、無傷のようだった。

「まぁ、あのオリーブの所でいったん速度ゼロになってたからな。危機一髪って所だな。ったく、御手洗篤郎のヤツ、マジムカつくんだけど。俺の手で、必ず殺してやる。」

私は、頭上に人の騒めきを感じて、顔をあげた。

私達の派手な墜落音に驚いた学生たちがベランダから身を乗り出して、こちらを興味津々に覗き込んでいるようだった。

それから、私は、足元の折れたオリーブの枝を思い出し、青くなった。

そのオリーブは、校長先生、自らが全校生徒の前で記念樹として植えてから、毎朝大切に水やりをしていた樹だったのだ。