保健室を沈黙が包み込む。

息苦しくなった私は、布団からひょっこり顔を出した。

それから、ぼんやり窓の外を眺める。

もう、日が傾きはじめていてみかん色のの光が保健室の床を染めていた。

沈黙をぶち破ったのは、冬山だった。

「俺も、花鈴が死んだ時、親族には、責め立てられたよ。でも、俺は、花鈴が死んだのは、俺のせいだとは、思ってないけど?」

「ふぅん。」

気のない返事を返す。

しかし、心の中は、冬山も一ヶ月前に実の姉を亡くしたばかりだったのに、こんな私の無様な身の上話なんかするべきじゃなかった、と後悔で大荒れしていた。

「春子さん?が死んだのも、お前のせいじゃないだろ。」

「うん?」

冬山の言葉が心にきっちり収まることは、なかったが適当に肯定を返す。

「じゃあ、大福あげよう。」

冬山が通学鞄をゴソゴソしはじめる。

私は、話の繋がりがうまく呑み込めないでいた。

「…は?」

冬山は次に〝一日三個限定日陰屋メロンパン〟を、私の前にかざした。

「メロンパンもいる?」

「何が言いたいの?意味不明だよ。まぁ、メロンパンも大福もいただくけど。」

現金な女である私は、メロンパンと大福を交互に頬張る。

そんな私から、ふっと目を逸らしてから、冬山は、小さい声で言う。

「つまり、その、元気出せよってこと。」

「ありがとう?」

何故か笑顔があふれた。