少女は紫陽花色の雫を拾う

私は、冬山の怒鳴り声を華麗に無視して風情な気分に浸る。

すると、冬山も静かにお茶に口をつけはじめた。

茶道部室のあるべき姿が戻ってきた。

聞こえるのは、ボリボリと〝じゃがりこ〟をかじる音とお茶をすする音だけだ。

この沈黙を破ったのは、冬山だった。

「なぁ、お前、一年半前に何があった?」

この時、私は、本当に心臓が飛び出すんじゃないかというほどに驚いた。

平常心、平常心と心で唱えながら、平静を装って言う。

「何のこと?」

「とぼけんなよ。一年半前、何があった?お前に力を制御させるようなことがあったんだろ?」

焦りを感じる私の言葉も自然ときつくなる。

「部外者のあなたに言う必要ある?あなたは、ただの依頼人でしょ。」

「確かに言う必要はないな。でも、忠告はしておく。あんま、引きずんなよ。」

私は、冬山が思いのほか、あっさり引き下がってくれたことに安堵した。

あれから、一年半…

確かにこれは、引きずってるのかもね、と自嘲の笑いがこみ上げる。

「えぇ、そうするわ。」

私は、素直に頷いた。