少女は紫陽花色の雫を拾う

榎本麻里子の言葉が途切れる。

私は、見えない力によって、現実世界に無理に押し出されるのを感じた。

一瞬、神経が断ち切られたのかと錯覚するくらい、鋭い痛みが私の脳内を襲ったのだ。

思わず、右手を汗の滲む額に当てる。

私の様子に、冬山が顔に焦燥の色を浮かべた。

「大丈夫か?夏川!」

「ヘーキよ、平気。集中力が切れただけ、私、集中するのに慣れてないし?私の成績知ってるでしょ。」

私は、冬山に大丈夫、と強気の表情を見せた。

私は、榎本麻里子について考えを巡らせる。

理解しがたいことが多すぎる。

花鈴さんが死んだのは、一ヶ月前だ。

十年も昔のことではない。

記憶がここまで薄れるということは、ありえるのだろうか?

榎本麻里子も自分に苛立ちを覚え、最低だ、とまで追い詰めているのだ。

榎本麻里子の中で、何が起きているのだろうか?