少女は紫陽花色の雫を拾う

私達は、ご友人との雑談に勤しんでいた榎本麻里子を空き教室に連れ込んだ。

冬山が、空き教室の鍵をちょっとばかり借用していた(パクっていた)らしい。

榎本麻里子は、冬山が、冬山花鈴の弟だと分かると、素直についてきた。

榎本麻里子は〝清楚〟とか〝素朴な美しさ〟とか云う言葉がよく似合うような静かな雰囲気を湛えた人だった。

「榎本麻里子と申します。」

雰囲気とは裏腹に凛とした鋭い声は、空き教室に響き渡った。

私達は、空き教室の中央付近に、椅子を寄せて集まった。

一瞬、冬山と視線が絡み合う。

その合図で、私は、両耳に天井へ指差すように立てた人差し指を当て、〝ビビビビビ…〟と呟く。

「え…?一年生の間では、この宇宙人みたいなのが、流行っているの?」

榎本麻里子が私を気味悪そうに指差す。

隣の冬山は、榎本麻里子に、にへらにへらと不気味に笑いかけている。

私の電波行動に対して、適当な言い訳でもしているのだろう。

「まぁまぁ、榎本麻里子さん。阿保のやることじゃないですか?生温かい目で見守ってやりましょう!」

とりわけ、こういったところではないだろうか。

私は、冬山の命令を最終確認する。

冬山には、彼自身の榎本麻里子への質問で心に映り込んだモノを全て捉えるように言われている。

その重要性の有無を判断するのは、冬山自身なのだと……

私は、目を閉じた。

身体中に張り巡らされた神経の全てを榎本麻里子に集中させたのだった。