「ねぇ、ほら見てよ、隣のクラスの夏川さん。ヤバいよね〜」

「俗にいう〝電波〟ってやつ？怖いんだけど。」

人目を憚ることのない陰口が私の耳にも入る。

一ヶ月前に二年の先輩が屋上から飛び降り自殺で亡くなったが、そんな非現実な話題は、既に息を潜めてしまった。

学園の生徒たちは事件以前と変わらず、悪口に興じていた。

風上学園の廊下は、一人の少女の噂（悪口？）で持ちきりだった。

そして、彼女たちの噂の中心人物こそが私、夏川杏子（なつかわあんず）なのである。

どうして、私が高校一番の注目人物に成り上がっているのか。

まさか、〝少しばかり可愛いいからって調子乗らないでよねっ！〟なんて理由で陰口がたたかれているわけではない。

私の容姿は、特別に整っているわけではないのである。
（しかし、毎日、鏡を見てため息をつかなければならない程ではない。）

では、なぜか。

それは、私が〝超能力〟という今どきの女子高生には珍しい習性をもつ少女だからである。