少女は紫陽花色の雫を拾う

夏休みのことだった。

私は、春子や平野くんと神崎神社の夏祭りに行く約束を交わしていた。

決して似合わないであろう桃色の浴衣を羽織った私は、待ち合わせの風上南公園の時計前にぎこちなく佇んでいた。

彼女たちは、待ち合わせ時間になっても公園に現れなかった。

十分、十五分、二十分…

無言で約束の時間から針を進める時計をじっと見つめているしかなかった。

待ち合わせの時間から、一時間後。

辺りは既に暗くなりはじめ、公園の電灯もつき始めていた。

私の瞳から見える公園の景色は、歪み出した。

一粒の涙が零れ落ち、地面に黒い染みを作った。

…その時だった。

その歪んだ公園の中に見慣れた影を見つけた。

「夏川!櫻井が高熱で行けなくなったって。」

平野くんだった。