少女は紫陽花色の雫を拾う


夏川は、30分と経たないうちに、歌舞伎町の酔い潰れと化した。

タチの悪いことに、既に、彼女の意識は吹っ飛んでいる。

「夏川。おい、夏川!」

うっすら赤みがかったその頰をパシパシ叩いてみる。

その口元は、ふにゃりと緩み、ヘラッと間抜けな笑みを浮かべたままだ。

「……ったく、幸せそ〜な寝顔しやがって。こっちは、おまえの呼び出しせいで寝不足だっつぅの。」

夏川の間抜け面を、恨めし気に見つめる。

その時だった。

けたたましい着信音が、〝寡黙なマスターと哀愁のある大人バー〟の雰囲気をぶった斬った。

———あんなこといいな、できたらいいな。

その着信音に、俺は、確信する。

夏川の携帯だ。

二十代後半にもなって、ドラえもんだなんて、この女、馬鹿だよな。