少女は紫陽花色の雫を拾う

次の日の放課後も冬山は、茶道部室を訪ねてきた。

「冬山、あなたのお姉さんは、どうして自殺なんかしたの?」

冬山は、事件の概要を紙にまとめてきたらしく、それを読み上げる。

「遺書によると、花鈴の成績に対する両親の圧力がひどかった、らしい。あ、これ、花鈴の遺留品ね。欲しけりゃ、やるよ。」

冬山が、若草色の風呂敷包を、私に手渡した。

「これ、六法全書……?」

「花鈴からは、法の道へ進むとかいう話を聞いた事は、無いんだが……」

女の子女の子しいものが目立つ、冬山花鈴の遺留品の中、古めかしい六法全書が、異彩を放っていた。

それ以外で、別段、気にかかるものは無かった。

「遺留品に、特に変わったものはないし。自殺動機が、親からの圧力ね。」

〝親の圧力〟が、自殺の決め手としては、あまりに薄すぎるように感じて、私には、すんなりと飲み込めなかった。

そんな私を横目に、冬山が息巻く。

「納得いかないんだよ、俺も。両親は、逆に花鈴を甘やかしていたように思う。」

「それは、それで親としていいのかな。勉強はなんだかんだいって大切でしょ。」

冬山は、私の顔にちらっと視線を移すと言った。

「花鈴は、お前と違って一級品に顔だちが整っていたからな。金持ちと結婚させるつもりだったんじゃねぇの?」