【短】大型犬系暴君

キュッと結び終えた途端、左京が私の名前を呼んだ。


その声音はB組で王様の如く私を呼びつける時とは違って、微かな甘味を帯びている。


「何?左京」


それに気づかないフリをして窓の外を眺めていると、また「潮」と呼ばれた。


「もう食い終わったんなら、いいだろう…?」


「………」


「なぁ…」


段々焦燥感を滲ませる声に、見られない様に口元を上げた。


皆は左京を鬼やら暴君やら悪魔やら色々言うけれど、もしかしたら私の方がよっぽど腹黒いかもしれない。


だって相手が焦ってる事を分かってるのに、もったいぶってるんだもん。