今から思えば、あれは完璧な振られ方だった。

 もうこっぱ微塵で、再生能力はゼロ。それまでの3年間は全て砂に埋もれてしまい、しかも当の本人から「忘れろ」と言われる始末。これまでのことは忘れて、春からは大学生に、って。

 あれは永久のバイバイなわけだったんだよね。私はそう理解した。



 熱が下がってから進路を心配した両親、特に母親に泣かれたので、他にすることのなかった私は重い腰をあげて3月の入試に滑り込んだ。偏差値を落としたからちゃんと受かったその近場の大学で、恋愛とは一切縁のない4年間を送ったのだ。

 もう人を好きにはなれないかもって思っていた。あ、この人素敵だなって思った先輩や同級生にも、恋心をもつことにブレーキをかけていたと思う。だってまた思い込むかも。相手は私のことなど何とも思ってはいないのに、ただの社交辞令を愛情だと勘違いするかも。そんなことになってまたあんな風になったら最悪だ。

 そう思ったら、恋愛など面倒くさかったのだ。新しく開けたのは勉強だけではない。アルバイトだって出来るようになったし、お酒も飲めるようになった。別に恋愛だけが楽しいことじゃなくなったというのも、私が恋愛から遠ざかった理由かもしれない。

 ・・・で、ようやく社会人になったのだ。そうしたら、3年でまた平野に出会ってしまった。どう考えたってやっぱりここで再会したのって余計な出来事だったわよね・・・。

 手羽先の骨を断ち切りながら、私はイライラとそう思う。