バウンス・ベイビー!



 高峰リーダー・・・。私は苦笑した。確かに、平野と何があったのだ、ってあの上司は勘ぐってるはずだ。それを田内さんが知ってるとなれば、脅して聞き出すくらいのことはしそうだな。

 田内さんはまだぼそぼそと小さな声で喋っている。

「僕は今の話を出来たら今日中に忘れるから、藤さんも・・・出来たら、忘れてしまいな。折りよく繁忙期だし、どうせ彼は2月までだし」

 その時、その彼が丁度入口を開けて入ってきた。平野がマフラーを首から外しながら、おはようございます、と声をかける。

 私は一瞬びくっと体がはねたけど、そ知らぬ顔をして平野から目を離し、田内さんに頷いた。

「頑張ります、ありがとうございます!」

「うん」

 平野はきょとんとした顔をして私と田内さんの顔を交互に見た。それから私におはよ、と挨拶をする。

 一体どんな顔して言ってんだ?と思ったけれど、ヘタレな私はヤツの顔など見れない。というわけで、速攻で無視して作業場へと飛んでいく。

 いつもの台ではなくて田内さんの台で仕込みの準備をしていたら、北浦さんも出勤してきた。そして大きな声で作業場全体におはよー!と挨拶してから、あら?と首を傾げる。

「千明ちゃん、今日はそこでするの?今日って田内君いるわよね?」

「え?」

 私が顔を上げると、北浦さんの後ろでエプロンをつけながらこっちを見る平野まで目に入った。あ、面倒くせ、と思ったところで、田内さんが静かに声を出す。

「僕今日ちょっと目が痛いんで、場所換わってもらったんです。いつもの台は明りが強くて」

「ああそうなんだ~。確かにそこの台は照明が眩しいかも~」