私を離して一歩後ろに下がってから、平野が静かに言った。

「これで書けるだろ、濃厚なキスシーン」

 私は頷いた。

「じゃあ、また、明日な」

 私はまた頷いた。

 平野は一度頷くと、ヒラリと手を振って歩き出す。寒いから藤も早く帰れよ~、そう言いながら駅にむかって公園を抜けていく。

 私はその後も暫くは、その場につったっていた。

 馬鹿みたいに、口をあけっぱなしで。