「え!」

「え?」

 私と田内さんで、ニュアンスは違ったけれど驚きがハモった。だって今まで忘年会なんてなかったんだよこの会社!年末年始もほぼ休みなどないし、人が忘年会で食べるための肉を作るのが仕事なのだ。

 それが、何だって~っ!!?

「え、高峰さん、忘年会ですか?本当に?」

 食べ物の話になると途端に目を輝かせて、田内さんが声を上げる。いつの間にかうしろのお喋りの声もやんでいて、作業場の全員が高峰リーダーに注目していた。

 それが判っているらしい、高峰リーダーはえっへんと腰に両手を当ててみせる。

「おう!景気がちょっとは良かったんじゃねーか?本社から金出るんだ。俺も昨日山田から聞いたんだけどな。半信半疑だったから本社に今朝問い合わせたら、本当だったからびっくりした。」

 おおお~!!と作業場に歓声が響いた。

 別チームの山田リーダーも、きっとすごく喜んだのだろう。だってこのケチくさい本社が、作業場の為にお金を出してくれるなんて!冷たくて無機質な作業場が一瞬で明るくなったのは絶対間違いではない。

「ホント~、リーダー!やった~!皆で美味しいもの食べましょう!どこにする?」

 前園さんがはしゃいでそう言い、その隣で北浦さんが突っ込む。

「今から店とれるかしらね?この人数で、そこそこ安くて美味しいもの・・・。ちょっと難しいわよ。どうするのリーダー?」

「うーん。俺はその手のことに詳しくないんで、北浦さん幹事やってくれないですか?」

 いきなり振られたパートさんは、それでも余裕気ににやりと薄く笑う。